検査済証は、建物が建築基準法に適合していることを示す重要な書類です。そのため、「検査済証がないビルは売れないのでは?」「価格が大きく下がるのでは?」と不安を感じているオーナー様も多いのではないでしょうか。
確かに、検査済証がないビルは金融機関の融資が付きにくく、買い手が限られることで売却が難航するケースがあります。しかし、検査済証がないビルでも戦略次第では、高く売却することが可能です。
この記事では、検査済証がないことによるビル売却のデメリットを整理したうえで、その解決策と、高値売却の成功事例を解説します。
そもそも「検査済証」がないと、なぜ売却が難しくなるのか?

検査済証は、建物が完了検査を受け、法令上の基準を満たしていることを示す書類です。
検査済証がないビルは、建物の安全性や遵法性を証明することが難しく、買い手側から「違法建築や増改築の履歴があるのでは?」と懸念を抱かれやすくなります。
その結果、相場より大幅に低い査定価格を提示されたり、買い手が見つからず売却活動が長期化するなど、オーナー様にとって不利な条件になりやすいのが実情です。特に、以下の2つの側面において、検査済証の有無はビルの売買取引の条件を大きく左右します。
買い手の「銀行融資」が通りにくくなるリスク
高額な不動産売買では、買い手が購入資金を銀行融資に頼るケースが一般的です。金融機関は融資審査において、担保となる建物が建築基準法に適合しているかどうかを重視します。
検査済証がない物件の場合、金融機関は違反建築の可能性を排除することができません。その結果、融資が否決されたり、融資額が減額されたり、金利条件が厳しくなることがあります。
また、金融機関によっては、検査済証の代わりに建築確認済証や確認申請書、設計図書、増改築の履歴、台帳記載事項証明書など、複数の書類提出を求めるケースもあります。これらの書類が揃わなければ、審査が進まないことも少なくありません。
つまり、検査済証がないビルの購入は、融資を受けて購入を希望する一般の資産家・富裕層にとって、ハードルが高くなってしまうのです。買い手となり得るのは、自己資金で買える資産家や、現金決済が可能な買取業者に限定されてしまうでしょう。買い手の母数が減れば、その分売却が難しくなるのはもちろん、売却価格も伸びにくくなります。
コンプライアンスを重視する法人買主からの回避
法人がビルを購入する場合、個人よりもコンプライアンス(法令遵守)を重視する傾向が強くなります。
特に上場企業や大手法人ほど、社内稟議や監査の観点から、検査済証があることを必須条件にしているケースも珍しくありません。将来的に行政指導や是正命令、用途変更の制限、改修工事の難航といったリスクがある物件は、最初から候補から外されやすくなるのです。
好条件での取引が期待できる法人買主を、検査済証がないという理由で逃してしまうのは、ビルのオーナー様にとって非常に大きなデメリットです。
検査済証がない場合の3つの解決策

検査済証がないこと自体が直ちに違法を意味するわけではありません。古い建物では、当時は完了検査の運用が徹底されていなかったケースもあり、適法に建てられていても検査済証が発行されていないことがあります。
しかし、検査済証は、工事完了時点に一度だけ交付される証明書であり、法律上、再発行は認められていません。工事完了時にそもそも検査済証の交付を受けていない場合や、紛失してしまった場合でも、再度交付してもらうことは不可能です。
そのため、検査済証がないビルの売却で重要なのは、「なぜ検査済証がないのか」「現状の建物が適法かどうか」を、別の方法で説明することです。
ここでは、検査済証がないビルの売却で知っておきたいに、3つの解決策を紹介します。
12条点検やガイドライン調査を活用した「遵法性の証明」
検査済証がない場合、一級建築士などの専門家による点検・調査を行うことで、建物の安全性や遵法性を客観的に示すことが可能です。専門家による報告書があれば、違反建築の可能性という疑念を払拭することができます。
【遵法性の証明に有効な点検・調査】
| 種類 | 概要 |
| 12条点検 | 建築基準法第12条に基づき、一定規模以上の建物について、一級建築士などが定期的に安全性・法令適合状況を点検し、行政へ報告するために行う法定の調査 |
| ガイドライン調査 | 国交省や自治体・業界団体等のガイドラインに沿って、一級建築士などが既存建物の図面・現況を詳細に確認し、現行法との適合状況や重大な違反の有無を評価・報告する任意の調査 |
「12条点検」は法律で実施・報告が義務付けられているため、売却予定の有無にかかわらず必ず実施しなければなりません。実施していない場合、法定点検未実施という別のリスクを抱えることになり、買い手の信用を落としてしまう可能性があります。
一方、任意で実施する「ガイドライン調査」は、検査済証がない建築物の遵法性を示すために非常に有効です。検査済証がない場合、買い手は「建築確認は取れているのか」「増改築で容積率オーバーになっていないか」「避難経路や防火区画に問題がないか」など、複数の論点を同時に心配します。
ガイドライン調査では、図面と現況の差分を含めて整理し、重大な違反の有無を評価したうえで報告書にまとめられるため、買い手にとって判断材料が明確になります。
現金購入者や専門の資産家・富裕層へのアプローチ
検査済証がないことが、売却活動において必ずしも致命的なハンデになるとは限りません。なぜなら、検査済証の有無が問題になりやすいのは、銀行融資を利用する買い手だからです。逆にいえば、融資を使わずに購入できる層にアプローチできれば、取引が一気に進みやすくなります。
例えば、以下のような買い手は、検査済証の有無よりも、収益性や立地、出口戦略を重視する傾向があります。
- 現金で購入する資産家
- 不動産投資に慣れた資産家・富裕層
- バリューアップ前提で購入する不動産会社
特に、都心部や駅近など流動性の高いエリアの場合、検査済証がなくても投資対象として成立するケースは少なくありません。
ただし、一般的な仲介会社を利用する場合、買い手層が融資を使う資産家・富裕層に偏りやすく、検査済証なし物件の売却は難しいケースも多いです。ビル売却を成功させるには、検査済証なし物件の取引経験が豊富で、現金購入者や専門投資家のネットワークを持つビル取引専門会社に相談するとよいでしょう。
再建築不可・既存不適格の評価をどう覆すか
検査済証がなく、建物が適法であることを公的に証明できない場合、将来の再建築が認められないリスクがあるのは事実です。
しかし、検査済証がないからといって、一律に「既存不適格、再建築は不可」と決まるわけではありません。検査済証がない理由には、当時の行政運用、検査未実施、書類紛失など複数のパターンがあり、建物そのものの遵法性とは切り離して考える必要があります。
例えば、建築基準法における接道義務を十分に満たしている土地であれば、然るべき調査や手続きを経ることで、将来の建て替えが認められるケースもあります。
また、たとえ現在の法令に一部適合していない「既存不適格」であったとしても、適切な是正工事や緩和規定の活用を検討すれば、再建築自体が不可能というわけではありません。
ただし、買い手側がこのような知識を持たない場合、書類がないことだけを理由に「再建築ができない物件」と思い込んでしまうリスクがあります。
検査済証がないビルを売却する際には、建物・土地の条件を踏まえたうえで、どこがリスクで、どこは問題ないのかを、正しく買い手に説明する必要があるでしょう。
ピュアジャパンの成約事例|検査済証なしでも減額なしで売却した秘策

検査済証がない物件は、一般的に買い手の融資審査が厳しくなり、査定額が下がりやすい傾向があります。しかし、物件の状況を正しく整理し、買い手の不安を解消できれば、相場水準での成約は十分に可能です。
東京・銀座に本社を構える株式会社ピュアジャパンでは、オフィス仲介からビル売買、リニューアル工事、プロパティマネジメントに至るまで、不動産に関わる幅広い事業を手がける不動産・建設会社です。ビルの売買仲介において多数の実績があり、検査済証なしのビルについても数多く成約につなげてきました。
ここでは、私たちがサポートした事例の中から、検査済証なしでも減額なしで売却に成功したケースを紹介します。
| 【ご相談内容】
建物そのものに違法性はないはずですが、検査済証がありません。他社に相談したところ、融資がつかないことを理由に、相場を大きく下回る査定額を提示されました。検査済証がない場合、相場での売却は諦めるしかないのでしょうか。 |
こちらのオーナー様は、他社の不動産仲介会社から相場より大きく下回る査定額を提示されたことに強い不安を抱えていらっしゃいました。これは、検査済証がないという一点だけで、実態以上にリスクが大きい物件として扱われてしまっていたケースです。
当社からオーナー様へは、適合性判定(ガイドライン調査)を実施するよう助言いたしました。ガイドライン調査の実施には費用が発生しますが、売却価格が数百万円〜数千万円単位で変わる可能性があることを踏まえると、結果的にオーナー様の利益につながります。
このケースにおいても、ガイドライン調査により遵法性違反がないことを客観的に証明でき、オーナー様の納得できる価格でビル売却が成立しました。検査済証がない物件でも、買い手の不安を論理的に解消し、適切な買い手に届ける戦略を取ることで、減額なしでの売却は十分に実現できます。
売却前に確認すべき「台帳記載事項証明書」の取得方法

交付を受けたはずの検査済証が手元にない場合は、「台帳記載事項証明書」を取得できないか確認しましょう。
台帳記載事項証明書とは、自治体が保管する建築確認台帳の記録内容を、公的に証明するための書類です。建築主、建築場所、用途、構造、建築確認の概要など、建築当時の情報が記載されています。
検査済証そのものは再発行できませんが、完了検査を受けて検査済証が交付されていた場合、その履歴が台帳に残っていることがあります。台帳記載事項証明書をもって検査済証が交付された事実を示せるため、売却時の補助資料として有効に活用できるでしょう。
ただし、台帳記載事項証明書に記載されているのは、あくまでも建築当時の情報に限られます。そもそも建築完了時に検査済証が交付されていなかったり、用途変更や増改築を行っている場合、現在の建物が適法である証明にはならない点に注意してください。
台帳記載事項証明書は、物件が所在する自治体(市区町村役所)の窓口で申請できるのが一般的です。申請時には、建物の所在地や建築年月、建築主などの情報が求められるため、登記簿謄本や建築確認通知書の控えなど、手がかりとなる資料を用意しておくと手続きがスムーズです。
まとめ|「売れない」ではなく「売り方」が重要

検査済証がないビルの売却には、「融資が通りにくい」「法人買主が敬遠しやすい」などのデメリットがあります。しかし、検査済証がないからといって、ビルの売却を諦めたり、最初から価格を大幅に下げる必要はありません。
検査済証がないビルの売却を適正価格で成功させるには、台帳記載事項証明書の取得、12条点検やガイドライン調査による遵法性の確認などを通じて、物件の状況を正しく把握することが必要です。
また、現金購入者や専門投資家などアプローチする買い手層を見極め、物件に合った売却戦略を立てていきましょう。
ピュアジャパンには、検査済証がないビルの売却を多数サポートした実績があります。売却戦略の立案はもちろん、専門家による調査の進め方や、資産価値を高めるリニューアル工事まで一貫してサポートいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。お問い合わせはこちらより